京都府宇治市伊勢田にある稲垣産婦人科です。専門の婦人科診療はもちろんの事、女性の為の漢方診療を行っています。

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漢方薬情報(は行・ま行)

『排膿散及湯』(はいのうさんきゅうとう)

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏などに難治性の膿疱を生じる疾患で女性に多い。

症例は70才の女性で来院の4年前から掌蹠膿疱症の治療を皮膚科専門医から受けていたが、治療効果が思わしくなく報告者の病院を受診した。
この症状に対して十味敗毒湯、荊芥連翹湯、温清飲を投与したがいずれも経度の効果を見るだけで効果が少なく、やがて1年経過してしまった。
そこで排膿散及湯エキス剤投与に切り替えたところ、見る間に症状が軽快して驚かされた。その後4年後の現在に至るまで排膿散及湯の内服は続行しているが膿疱の再発は無い。

『麦門冬湯』(ばくもんどうとう)

症例1:68歳男性。肺扁平上皮癌で肺癌手術後経過良好で退院。その後空咳が続きリン酸ゴテイン投与するも無効で、麦門冬湯エキス剤を投与したところ数日で咳嗽が軽快し、2週間で治癒した。

症例2:61歳男性。肺扁平上皮癌で肺癌手術後経過良好で退院。術後2ヶ月過ぎより夜間の空咳が出現した。麦門冬湯エキス剤を投与したところ、2週間で咳嗽の消失を見た。


口腔の悪性腫瘍に放射線治療を行うと、唾液腺が照射されて分泌低下がおこり、患者は口腔乾燥症に悩まされることが多い。
報告者の大学病院口腔外科では舌癌、下顎骨癌などで放射線治療、手術を受けた患者に麦門冬湯エキス剤の投与を行い、唾液分泌量の増加、口内乾燥の改善を認めた。


咳喘息(COUGH VARIANT ASTHMA:CVA)のタイプ、つまり咳込みが目立ち、喘鳴はそれほどではないが痰が絡みやすいタイプの喘息に麦門冬湯エキス剤が有効、特に夜に強くなる空咳タイプにはよく効く。


肺癌と診断された時点ですでに身体各部に転移を認め、手術不可能であってしかも化学療法が無効であった2例の肺癌患者にはげしい乾性咳嗽を生じたため、リン酸コデインを投与し、一時軽快をみたが次第に効果が弱くなり、さらにはリン酸コデインの副作用として強い吐き気が生じて患者を苦しめるようになった。
そこで麦門冬湯エキス剤を投与したところ、2例とも1~3日後には乾性咳嗽が消失した。
その後患者は2例とも2~3ヵ月後の死亡時まで咳嗽に苦しめられることはなかった。


乾性咳嗽を伴う成人気管支喘息患者49例に対し麦門冬湯エキス剤を投与し、34例(69.4%)において有効であった。


57歳女性。脳腫瘍(軟骨肉腫)部分摘出術を行って退院後、約6ヶ月ごろより乾性咳嗽が出現し次第に強くなるとともに、嗄声、軽度の嚥下障害も伴うようになった。
各種去痰剤、鎮咳剤を投与したがほとんど効果はないそこで麦門冬湯エキス剤の投与を開始したところ1ヵ月後には咳嗽は著明に消退し、その後6ヶ月ほど投与を続けた。同方剤が中枢性脳神経麻痺による難治性咳嗽にも有効な症例があることが判明した。

『八味地黄丸』(はちみじおうがん)

75歳男性。主訴は四肢の冷えと腰痛で受診.八味地黄丸エキス剤を投与主訴は数ヶ月で次第に軽快。11ヶ月目に患者が言うには2年前からどうしても直らなかった咳と痰がこの薬を服用してから少なくなり、最近では全く無くなって大変うれしいと。
これは報告者の医師にとっても全く予想外のことであった。
これを漢方的に説明すれば、この咳は腎陽虚のために生じた「腎咳」である。
だから八味地黄丸が奏効したのであろうと報告者は述べている。


45歳男性。数年来、糖尿病の治療を受けているが最近陰萎を自覚、来院した。
八味地黄丸エキス剤を投与したところ、2週間後すでに効果を認め引き続き投与を継続している。

『半夏厚朴湯』(はんげこうぼくとう)

76歳女性。胸焼けが強く他院で上部消化管内視鏡検査を受け糜爛性胃炎を発見、治療を受け胸焼けは治癒した。
ところが検査8ヵ月後になってから咽喉頭異常感を訴えるようになった。
そこで半夏厚朴湯エキス剤の投薬を開始したところ10日後にはほとんど異常感は消失したが患者の希望で服薬を2ヶ月続けた。


63歳女性。右眼球にごみが入った様な異物感が生じた。眼科では異常はないと言われた。半夏厚朴湯エキス剤を投与したところ2週間の服用で症状は消失した。


進行期卵巣癌は癌性腹膜炎を併発し、腸閉塞などの原因となる。症例は52歳の進行期卵巣癌患者。
癌性直腸狭窄による排便困難および腹痛、腰痛を訴え、開腹したが腸管は卵巣癌組織に巻き込まれ切除はまったく不可能のまま手術を終了した。術後3日目から直腸刺激症状が出現し、1日30回以上もトイレに行くという異常な便意亢進を訴えた。
鎮痙剤や消炎鎮痛剤を投与したがまったく無効であった。そこで術後10日目から半夏厚朴湯エキス剤を投与したところ、服薬直後より異常便意が消失した。患者の希望で継続内服中である。


45歳男性。精神分裂症。自殺を図り、報告者の病院に入院“吐き気がする”とベットの上で“げーげー”と呻吟する。“口が閉じない”といって口をあけたまま臥床している。
転換性障害と考え、半夏厚朴湯エキス剤の投与を始めたところ、投与数日後より、口を閉じるようになり、嘔気や呻吟も消失した。


嚥下反射の低下は誤嚥性肺炎の原因になる。老人病院に長期入院中の脳梗塞または脳出血患者で誤嚥性肺炎の既往のあるものを対象として半夏厚朴湯エキス剤の効果を検討した。
チューブを経鼻で咽頭まで挿入し、蒸留水を1cc注入して飲み込むまでの時間を測定すると健常高齢者の場合で2秒以下とされるが対象患者のそれは11秒であった。
半夏厚朴湯エキス剤の投与開始後4週間で対象患者の嚥下反射は11秒から2秒に改善した。

『半夏厚朴湯、四逆散、大承気湯』(はんげこうぼくとう、しぎゃくさん、だいしょうきとう)

37歳女性。主訴:発作性咳嗽、咳で報告者の医院を受診したのだが、所見としては肥満していて、腹満が強く、顔が赤らんでいることが判った。
便秘もかなり激しい。半夏厚朴湯、四逆散、大承気湯と3種のエキス剤を合方して投与した。すると気持ちよく排便できるようになり、腹満が改善すると同時に咳嗽発作も消失した。

『半夏瀉心湯』(はんげしゃしんとう)

下痢を訴える患者で内視鏡検査では異常所見を認めず、下痢型過敏性腸症候群と診断した15例に対し半夏瀉心湯エキス剤を2週間投与したところ、下痢が改善したのは11例(73%)であった。

55歳男性。糖尿病の診断を受けてから10年近く放置していたが、倦怠感、多飲、多尿などで報告者の市立病院を受診。
血糖降下剤に始まり、今は頻回インスリン注射療法を続けている。食欲不振、嘔気で受診、糖尿病性胃腸炎の診断で半夏瀉心湯エキス剤を投与したところ、1週間で胃腸症状が改善した。

『半夏瀉心湯、柴苓湯』(はんげしゃしんとう、さいれいとう)

塩酸イリノテカンの登場により、従来難治性とされていた各種卵巣癌、子宮癌などの化学療法有効率が大きく改善される可能性がある。一方同剤の副作用としては死亡につながる重度の骨髄抑制の他に重篤な副作用として水様性下痢がある。報告者は塩酸イリノテカン服用中の癌患者に水様下痢を発症したときに半夏瀉心湯エキス剤を投与し、以下の経験を学び取ったという。

1)水様下痢に対し半夏瀉心湯エキス錠剤を投与しても効果なく、2回量を一度に服用しても無効であった。そこで半夏瀉心湯エキス顆粒剤の2回量を一度に投与したところ直ちに下痢が止まった。

2)水様下痢に対し柴苓湯エキス剤(顆粒)の2回量を一度に服用したところ半夏瀉心湯とほぼ同等の下痢阻止効果があったが、やや遅効性であり、半夏瀉心湯にはない著しい腹鳴を伴い患者が不快感を訴えた。

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