京都府宇治市伊勢田にある稲垣産婦人科です。専門の婦人科診療はもちろんの事、女性の為の漢方診療を行っています。

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消化器関係の症状

胃癌の肺転移例に対する十全大補湯の効果について

胃癌は放射線療法や化学療法の効果が他の癌に比べて低いため外科適切除術が行われる。
その補助療法としてインターフェロンを用いるが奏功率が12~25%と決して満足できるものではないばかりか、倦怠感などの副作用のため中止せざるを得ないことも少なくない。一方胃癌が肺などに転移することもしばしばあり、その場合予後が著しく不良となり、いまだに有効な治療手段が確立していない。
十全大補湯は現在癌治療に際し、支持療法として位置づけられている。
すなわち癌そのものの進行に伴う食欲不振、全身倦怠感などの改善、および化学療法、放射線療法に伴う副作用の軽減、この両者を目的として用いられることが多い。しかし報告者らはマウスを用いた実験によって、十全大補湯が胃癌の肺転移抑制作用を有することを示す知見を得ており、今回胃癌が肺に転移した症例に十全大補湯を投与して、支持療法としての効果のみならず、実際に腫瘍の縮小効果が認められたことを報告している。
  • 症例

    66歳男性。
    6ヶ月前より夜間就寝中に呼吸困難が続いており、精査のため報告者の大学病院呼吸器内科に入院した。
    レントゲン、エコー、CTなどにより右胃癌と多発性肺転移の診断で泌尿器科に転科した。
    インターフェロン、抗癌剤を4ヶ月間投与後胃摘除を行った。
    術後5年間インターフェロン投与を行ったが倦怠感などの副作用が強くなり5年目にはインターフェロンを中止せざるを得なかったが肺の転移巣が増大傾向を示してきた。
    そこでこれまでの薬剤をすべて中止し、十全大補湯エキス剤のみの投与を開始した。
    3ヶ月には全身状態が良好になった。食欲が著しく増し倦怠感も改善したのである。1年後肺転移巣のわずかな拡大を見たが新たな転移巣は認められなかった。2年半後肺転移巣が縮小傾向に転じた。その後肺転移巣の著しい縮小は認められないものの、患者のQOLは著しく改善した状態を保っている。

脂肪肝に対するインチンコウトウ、防風通聖散併用療法

本来、各種黄疸に奏功する薬剤であるインチンコウトウは著明な利胆作用があるが、さらに血中中性脂肪を減少させる作用が報告されている。
一方防風通聖散は「食毒排泄薬」として有名であり、さらに最近の研究では白色脂肪細胞中の中性脂肪を分解し、褐色脂肪細胞を活性化して体重減少効果を発揮することが知られている。
報告者らは脂肪肝症例に対し両剤の併用を試みた。
  • 症例

    53歳女性。
    主訴は全身倦怠感、後頭部不快感。近医で肝機能障害、高脂血症が認められ、報告者の大学病院を受診し、前記以上のほか、腹部エコーで著明な脂肪肝が発見された。
    食事療法(1500~1700KCal/日)、運動療法(6000~8000歩/日速歩)を開始したが3ヵ月後にも体重その他検査成績の改善が見られないため、シンバスタチン1mg/日の投与を開始した。
    その後2年半ほど検査成績は一進一退で肥満、脂肪肝にも著明な改善を認めないため、従来法を継続しながら漢方治療を加えることに踏み切った。インチンコウトウエキス剤および防風通聖散エキス剤の併用投与を開始し、4ヵ月後には体重が81キロから74キロに中性脂肪が449mg/dlから233mg/dlと減少し他脂肪肝にも著明な改善が認められた。
    1年後の現在も漢方薬投与を継続中である。

嘔吐反射が強い人の抜歯に五苓散が奏功した1症例

  • 症例

    48歳男性。
    左下顎智歯が残痕状態で打診痛や咬合痛もあり、抜歯の適応と診断し抜歯術を開始した。
    ところが術中嘔吐反射が極めて強く現れたため手術の継続が困難になった。
    そこで五苓散エキス剤を冷服させ経過を見たところ、30分後に抜歯を開始するも嘔吐反射が全く現れず、無事抜歯を完了した。

補剤が奏功した難治性反復性上気道炎の1症例

上気道炎は、西洋医学的には、通常抗生物質や消炎、鎮痛、解熱剤を用いて治療する。著しく重症であれば、さらに副腎質ホルモン剤やガンマーグロブリン製剤を併用し多くは治癒に至る。しかし稀には西洋医学的治療では治癒できない例も存在する。そのような高度の難治例を漢方薬で治癒させえた症例の報告である

症例1:初診時59歳女性。2年前から高度の上気炎を反復するようになり、某国立病院内科、耳鼻科で8度も入院精査、治療を繰り返していたが症状が次第に増悪してきたので報告者の病院耳鼻咽喉科に紹介された。来院時、口唇や口腔粘膜も含めて上気道に発赤、浮腫など広範に炎症所見が認められたほか、著しい抑うつ状態を呈していた。それに対する半夏厚朴湯の効果と上気道炎症症状に対する小柴胡湯の効果の両方を期待して柴朴湯エキス剤を投与した。約1ヶ月で炎症はかなり軽快したが服薬をやめると炎症が再燃するし、又抑うつ状態は続いており、食欲不振を強く訴える。そこで六君子湯エキス剤補中益気湯エキス剤の併用療法に切り替えた。以後症状は次第に好転し、約2年の投薬で治療を終了したが、約4年後の現在症状の再発も無く快適な状態で過ごしている。

下腹痛を訴える黄体の囊胞に対する芍薬甘草湯の効果

下腹痛を訴える計4センチ以上の黄体嚢胞患者26例に芍薬甘草湯エキス剤を投与した結果平均3.3日で鎮痛消失を見た。一方同症患者5例にNSAIDsを投与した結果では疼痛消失に4.7日を要した。

肝疾患に対する最近の漢方療法


肝癌の原因の殆どはB型およびC型ウィルス肝炎であり、特にC型では慢性化が進行し肝硬変に至ると10年以内に70%~80%に肝癌が発生する。強力ミノファーゲンとウルソデオキシコール酸の併用療法で発ガン率が半分に下がるが、それにさらに十全大補湯エキス剤を併用したところ発ガンがさらに顕著に減少したし、十全大補湯単独投与で発ガンを阻止できた例も少数ながらある(某県がんセンター病院報告)。肝切除後の腸管蠕動麻痺は肝障害の原因になる。術後大建中湯エキス剤を投与すると術後の排ガスがきわめて良好となり、本剤が腸管蠕動麻痺を顕著に抑制することが明らかになった。

機能性胃症状(FD)に対する六君子湯の効果

潰瘍や胃炎などの気質的変化を伴わない胃症状(FunctionalDyspepsia)は最近増加傾向にありQOLに著しい障害を与える。報告者は12例のFD症例(すべて女性。16~77歳)に六君子湯エキス剤を2週間投与して効果を検討した。その結果、胃もたれ、むかつき、嘔吐、痛みなどすべての症状について著しい改善が認められた。その際、潰瘍様型症状(空腹時、夜間の胃痛)は早期から顕著な改善効果を認めたが、運動不全型症状(胃もたれ、むかつきなど)は徐々に症状が改善される傾向が認められた。

苓桂朮甘湯について

本方は、消化管の水分吸収機能の低下のために水分が偏在して、めまい、動悸、肩こりなどの症状を取り除く薬能があるとされている。

臨床報告1:めまい患者71例に苓桂朮甘湯エキス剤を投与した結果、中等度以上改善したもの17例(24%)、軽度以上改善したもの48例(67%)計65例(91%)と高い効果が見られた。

臨床報告2:めまい患者20例に苓桂朮甘湯エキス剤を投与した結果、4週目に著効7例、有効3例、やや有効2例で有効率は50%であった。8週間後には著効9例、有効4例、やや有効1例で有効率は65%であった。これは本方の遅効性を意味するものと考えられる、

腸管虚血に起因する便秘に対する大建中湯の効果

イレウスに対する大建中湯の顕著な効果については一般に認められつつあるが、今回報告者らは腸の血流障害に起因する極めて難治性の便秘に対する本方の有効性を報告した。症例は5例でいずれも腹部大動脈の手術的治療のあと腸管血流の低下を起こしており、全例が下剤、浣腸でもコントロール困難な便秘に悩まされていた。大建中湯エキス剤を投与したところ、1週間くらいで全例、便秘が軽快し、20~60日で前例便秘治癒と言うことで投薬を終了した。その後前例が安定した排便状態が続き、副作用は全く認められなかった。

糖尿病患者の便秘に桂枝加芍薬大黄湯が有効であった一例。

72歳女性。15年前から糖尿病と診断されているが、転居などから治療を中断していた。今回糖尿病性腎症など多くの合併症のため報告者の病院に入院となった。多くの症状の中で患者は特に腹部膨と頑固な便秘に悩まされている。種々の下剤を投与してもこの症状は軽快しない。そこで桂枝加芍薬大黄湯を投与したところ、数日で腹部膨満と便秘が軽減し経過は良好である。

難治性の下痢が真武湯で軽快した1例

症例:77歳男性。自宅で倒れ、報告者の大学病院に搬送入院となりくも膜下出血と診断され手術治療を受けた。術後意思の疎通が取れない状態が現在も続いている。術後6週間で水様蹴りが始まり、便培養でMRSAを認めた。薬剤投与するが全く効果が無いため真武湯エキス剤の投与を行ったところ3日目から通常便を認めるようになった。なお投与方法は微温湯に真武湯エキス剤を溶解し、経鼻経管的に行っており現在も投与続行中である。

重症心身障害者の難治性便秘に桂枝加芍薬大黄湯の有効例

重症心身障害者の場合、排便のための十分な腹圧をかけにくく、さらに運動不足や各種向精神薬の影響もあって便秘を起こしやすい。

症例1:39歳女性。学齢期より行動障害で施設に入所していたが、その後てんかんを発症、さらに硬膜下血腫で手術後後遺症として右片麻痺を生じ報告者の病院に入院となった。入院後便秘がひどく、センナ、酸化マグネシュウムその他の下剤を投与しても自力排便が出来ず腹部膨満も認め浣腸や導気などで辛うじて対処していたがX線検査やCTで巨大結腸を認めたので桂枝加芍薬大黄湯エキス剤の投与を開始した。2週間後より自力排便の増加と腹部膨満の軽減を認め、現在は良好な状態で服薬継続中である。

左上腹部痛に茯苓飲合半夏厚朴湯が奏効した1例

左上腹部痛を訴えるものの中には、確定診断のつきにくい軽症の慢性膵炎が意外に多く含まれているものと推測される。

症例:37歳女性。1年前から左上腹部と左背中に疼痛発作がたびたび起こるようになり、消化器系の精密検査を受けたが異常は見つからなかった。報告者を受診、胸焼けあり、みぞおちがつかえる、ゲップがよく出る、などを目標に茯苓飲合半夏厚朴湯エキス剤を投与した。2週間後には疼痛発作が軽減し、1年後には疼痛発作が起こらなくなった。臨床経過から慢性膵炎が強く疑われたが、証に従って本方剤を投与したことで慢性膵炎が治癒した可能性が大きい。

半夏瀉心湯の下痢に対する効果(動物実験)

抗がん剤イリノテカンの副作用である下痢に半夏瀉心湯が有効であることが臨床的に報告されているが報告者などはラットを用いて実験を行った。ラットを半夏瀉心湯エキス溶解液(TJ―14)投与群と非投与群に分けたがその前に
1)80%の小腸を切除した短小モデル 2)50%の結腸を切除した短結腸モデルを作製して検討を加えた。その結果 1)短小モデルでは術後便の性状の下痢状態がTJ-14投与群では10日間、非投与群では14日間ぐらい続いた。又、体重回復もTJ-14投与群のほうが早かった。2)短結腸モデルでも術後便の下痢状態の消失、体重の回復、共に投与群の方が早かった。この結果からTJ-14は小腸や結腸の由来する下痢症に対し効果的であることが示されたといえる。